季節は、闇。

繰り返される、
逃げる事の叶わぬこの季節が、
俺は嫌いだった。



「…あぁ、やっと終わったか…」

今日のお勤めを終え、家路につこうとコキコキと左右に首を鳴らしながら、俺はそう深い溜め息を漏らしていた。


外へ出れば、深い闇。

民家から漏れる灯りと、所々にある外壁に付けられた微かな光を放つ古びたランプ。

それだけを頼りに、
俺は大あくびをしながら、そろそろと足を進めた。


レンガ造りの路地を進めば、船着き場へと到達する。
そこで陸路は行き止まり。

その先は舟無しでは進めない水場が広がる。

微かな灯りに照らされて、黒い水面が橙色にゆらゆらと揺れていた。


「……舟師は…、こんな時間じゃあ、居ないか。はぁ…」

目の前に広がる水面に右から左へと目をやるが、舟の気配は無い。
すっかり終業の時間を過ぎていたのだ。


どうやって帰るか…
疲れてるのに…


俺たちが暮らすこの街は、「カロリス」と人々に呼ばれる大地の無い広い水場に在った。


「カロリス」

この星の半分を占めるその土地は、大地が大きく窪んでいる。
長年に渡り、
その窪みに地下から湧き出る水が溜まって出来た、広い広い水場。