記憶 ―黄昏の蝶―



「…じゃあ、これ…お代ね。いつも有り難うね。」

孤児院へ着くと、
ビビは往復をさせた舟師に代金を支払い、愛想良く笑っていた。


「いいえ、お礼なんて!ビビさんのお役に立てるなら喜んで!いつでも呼んで下さい!」

…若い男の舟師。
まるで俺たちは目に入っていない様に、興奮気味にビビに言葉を返していた。

ふぅん…?

今日は子供たちの買い物だけだった様だが、普段から食事の材料や日用品の買い出し、孤児院の家事をこなすビビにとって…
どうやら馴染みのある舟師。


「…本当?じゃあ、明日はお祭りの広場に子供たちを連れて行きたいから…何人か舟師を連れて来て貰える?」

「喜んで!お得意さんですから、割安価格でお供しますよ!」

男の熱っぽい瞳。
ただの「お得意さん」として見ている瞳ではない事は、俺から見たら明らかで…。

ビビは彼の気持ちに気が付いているんだろうか。


強気でハキハキとした性格。
物怖じしない自信に溢れた意思の強い瞳。

面倒見が良く子供に愛される、容姿端麗でもある彼女。

表面上から見るだけでも、男たちが憧れを抱くのは納得せざるを得ない。

街の男たちが、ビビを「高嶺の花」扱いしているのを俺は知っていた。