記憶 ―黄昏の蝶―



「…僕、リュウ様と一緒にご飯が食べたいよ…」

レンの必殺上目づかいが、
舟師の心に直撃した様だ。


「…リュウ様、子供たちもそう言っていますし、お帰りになったらどうですか?」

舟師が俺に問い掛けた言葉に、ビビが一瞬だけニヤリと笑う。

あぁ、そういう事か。
ならば、
…もう一押しだ。


「…そうしてやりたいのは勿論ですが。しかし、皆さんが準備されている中、私だけ帰るわけにも…」

「いやいや!いつもリュウ様はそう言って人一倍に動いてくださる!あとは俺たちに任せて、たまには帰ってやって下さいよ…」

「…そうですか?」

と白々しく肩をすくめる俺。
申し訳なさそうなビビ。


「祭りの前日くらい、皆で食卓を囲んで下さいよ!なぁ、僕!」

「――うん!」

レンや子供たちから歓声が漏れると、舟師は満足そうな笑顔を見せた。

この流れは、
ビビの計画の内なのだろう。


「…では、お言葉に甘えて。申し訳ありませんが、後をお願い致します。」

「無理を申してすみません。」

俺が頭を下げると、
ビビもそう舟師に頭を下げた。

よし…
温かなミートパイだ…

そう心が踊るのを、
懸命に押さえていた。