法皇は、皆に伝えていた。
俺の名も「人柱の真実」も伏せ、
「世界を救った揚羽蝶」の話を、まるでおとぎ話の様に、子供たちに話して聞かせていた。
「…凄いや、見る事が出来たら幸せになれるっていう…揚羽蝶だよね?カイト兄ちゃん!」
「…さぁ?幸せになれるかどうかまでは…」
『…もう、お陰様で幸せだし』
そうカイトの心の声が言う。
俺は小さく笑った。
「…アゲハ、アゲハの名前はね?あの蝶々から貰ったんだよ?蝶々と同じ名前なんだよ?」
レンが俺を指差して、
満面の笑みでそう話す。
「だから、捕まえちゃダメ。自由に飛べなくなっちゃったら、蝶々も可哀想だよ?」
「ちょーちょ、かわいそう?」
「うん。それにね?僕はお父さんと約束したんだ。蝶々を見付けても捕まえちゃダメだって。」
「…おとうさんと?じゃ、アゲハも!まもる!」
女の子は「ハイ!」と元気良く片手を上げていた。
子供たちの会話の横で、
カイトは俺を見上げて微笑んでいた。
『…良い子に育ったな?』
「…俺のお陰でしょ?」
自信たっぷりに答えたカイトは、レンに疑わしい目で見られていた。

