七色に光る街。

幾ら皆が探しても見付からなかった「その街」は、本当に存在していた。

見付かる訳が無かった。


その場所は…、
光の季節と、闇の季節の「境」。

細いその一線の中に、
蝶という小さな身体を滑り込ませて、俺は辿り着いた。



『…この街は、異世界を…時空を越えて旅する…、唯一無二の街…』

『…時に「人」も迷い込む、世界を繋ぐ扉の様なもの…』


色々と教えてくれるのは有り難いが、急に耳に届くその声は身体に…いや、「心」に悪い。


七色に光る街。
それは今までに見た事も無い、幻想的な街だった。

同じ素材で出来た石造りの街全体が、代わる代わる様々な色に点滅している。

それは、
ふんわりと俺を包み込む様な、穏やかな優しい光だった。


『…その街には…古から定めを守る妖精の一族が住み着く…』

『…街は星を渡り、そなたを金色の懐中時計を持つ前任の元へ導くだろう…』


ここは、
光の季節と闇の季節の狭間。

カロリスの街の住民たちが使うランプの色よりも柔らかい、

淡い橙色…
街の周囲は、黄昏時に染まる。


『…前任は彼方の星、ヴァン=ラディスの光が届かない暗闇の星へ渡った…』