姿無き声が言っていた通り、
俺は導かれているのだろう。

何処へ行くのか分からないはずの俺の身体は、自然と行く先を知っていた。

「七色に光る街」を目指しているのか、カロリスの果て…アキラたちの暮らす崖へ来ていた。

でも…

「七色に光る街」は無い…
そう聞いていたのに…。


眼下には、
アキラの暮らす小屋。

小屋と繋がる簡易な舟着き場に、アキラの姿がある。

彼と、目が合った。


「――…と、父さん!来て!!」

「…はぁい?」

アキラの呼び掛けに、小屋の中から姿を現したのは、お世話になったアラタさん。


「――あれ!あれ、何だっ!?蝶々かぁ!?あれが蝶々か!?」

騒がしく俺を指差すアキラの横で、アラタさんも目を見開き驚いている。


「……蝶々…だね?」

「――捕まえなきゃ!追い掛けなきゃっ!…何か…あぁ、網は!?父さん、網は何処だっ!」


……げ。
おいおい…勘弁しろよ…。


ちょっとばかりお礼を込めて近付こうとした俺は、危険を察知して再び空に上った。

しかし意外な事に、
アラタさんがアキラの腕を掴み、行動を止めていた。


「――ちょっと!何すんのよ、父さん!蝶々が逃げちゃうじゃんかっ!」