俺たちは場所を移動し、
協会本部の建物の裏側へやって来ていた。

もう街の住民は寝静まった頃。

しかし、
光の季節という事で、辺りは真昼と変わらずに明るく、秘密利に行動をしたい俺たちにとっては居心地が悪かった。


「…カイト…」

まるで子供が親を引き留めるかの様に、俺の衣服の裾を掴んで離さないカイト。

俺が人柱になる事に、
まだ納得がいっていない様だ。


「人柱」と言っても、
決して「死ぬ」訳じゃない。

人柱から解放されたユピテルは、大昔からの祈願を果たして星を渡って去った。

死ぬ訳じゃない。
むしろ、
生き続けるんだと俺は思う。

ただ…、
皆の前から姿を消し、
いつ戻って来れるか分からないだけだ。

そう説明はした。

それでも、
俺を奪われる事には変わりないと、いざ水面へ入ろうとする俺の服を掴んで離さない。


「……嫌だよ……」

カイトは泳ぐ事が苦手だ。
俺に「水面に入られたら最後」と言わんばかりに、しっかりと力が込められていた。


「……離せよ?」

「――嫌だよ!!バカ!」

そんな俺たちのやり取りを、
一歩後ろから法皇が静かに見守っている。