はぁ…はぁ…と、
暗い洞窟の道の中で、俺の息づかいだけが響いていた。
「…結構…急じゃねぇか…」
道は予想以上に傾斜があり、普段から舟で移動する俺にとっては厳しいものだった。
足を上げ、土を踏みしめる度に、手に持つ橙色のランプがユラユラと揺れていた。
どの位歩いただろうか。
暗闇の向こうに、
同じ色の光の粒が揺れている。
そのランプの光は次第に近付き、俺のすぐ前までやって来た。
「…見ない顔だな?」
男はそう言うと、ぼんやりと照らされた顔を近付け、俺の顔を覗き込んだ。
その拍子に男の背負っていた荷物が迫り、俺はビクリと身を避けた。
「――お、すまん。…街の人間か?族長がよく通したな?」
「…族長?アキラのお祖父さんの事ですか?」
「そうそう!上に何しに行く?お前、舟師か?これが目的か?」
男は自分の背負っている荷物を指した。
『木材』だった。
それも太い幹を輪切りにした、男の身長の半分はあるだろう大きな物だ。
大地の少ないカロリスでは、
それは大層に貴重な物だ。
「…樹が、在るんですか…?」
「…何だお前、舟師じゃないのか。たまに潜りで舟師が材料採りに来るからさ…」

