記憶 ―黄昏の蝶―



彼が現れた直後、
この星の姿は一変した。

白い星に大地は引っ張られ、
光の季節の大地は気温が上がり、闇の季節の大地が陥没した。

一瞬の事だったという。

凄まじい地響きが鳴り渡り、
メリメリ…と大地が声を上げ、人々は光の大地で耳をふさいで耐えていた。

大地の悲鳴が止み、
初代法皇たちが、
闇の大地を見に行くと…、


「…それが『天災』…『カロリスの誕生』なのか…」

「そうじゃ…。彼らはこの絶壁の上に立ち、未だ水の無いカロリスを見下ろした…」


白い星に引っ張られ、
この星の位置が変わった。

白い星に近付いた為に、崖の上では暑くて到底暮らしてはいけなかった。

蝶たちのほとんどが、
気温の差で死んでしまった。

わずかに残った蝶に導かれて、
人々はカロリスに下りたのだという。


「……下りた?どうやって、この絶壁を下りた…?」

「下に続く道があったんじゃ…」


「――道?どう見ても、上に登れる道なんて無いだろう?今は崩れてしまった物なのか…?」

俺がそう言うと、
お祖父さんは声を上げて笑っていた。


「…今も尚、残っておるよ?」

「……ぇ?」