お祖父さんの話は、
まるで子供たちの話す夢の中の様な出来事で、

容易に受け入れられない内容だった。


未だ、カロリスが出来る前。

大地に窪みは無く、
一繋がりの大地には緑が溢れ、
資料に残る様に「蝶」が光を求めて飛んでいた。

人々もまた、
光を求める蝶の様に、大地を移動して暮らしていたという。

車輪のついた舟に家財を積み、
家畜を引き連れ、
緑の大地を移動する民を、お祖父さんは「遊牧民」と呼んだ。


「…人魚は…?」

「未だ居らんかった。まぁ…聞きなさい…」


人々は光を与えてくれる白き星を、神と崇めた。
あの星には神が住んでいる。

協会が生まれ、
お祖父さんの祖先にあたる人が、初代法皇の座に就いた。


ある日、
平穏だった彼らの元に、
1人の青年が現れた。

あの白い星から来た、と。

人々は彼を「神」だと崇めた。
しかし彼は、それを否定した。

あの白い星から逃げて来たのだと、七色に光る街に行き、星を渡る途中なのだと言った。


「……アイツも同じ様な事を…。星を、渡る…?それは初めて聞いたが…」

お祖父さんは俺に何も答えず、話を先に進めた。