「…昔…誘拐されかけた…」

懸命に頭を働かせ、
俺はある可能性に気が付いた。


「…あぁ、わしが命じた。お前さんには全てを知っていて貰いたかったんじゃ…。ここに着く前に逃げられてしまったがの…。」

「――…知っていたら!」

「…知っていたら逃げはしなかった…?そうかのぅ。わしはお前さんに逃げられて以来、自らがこの地に来るのを待つしか無かった。協会の考えに支配され、話しても信じては貰えないと…」

「――そんなっ!」

もし知っていたら!
人柱を逃がしはしなかった!

俺の手で、
この星の均衡を崩そうなどとは…決して!


「…こうなって、初めて協会に疑問を持ったんじゃろう?運命じゃよ…」

「……全部…話してくれ。その時に話そうとした事も、全部!」

余裕なんて無かった。

いつの間にか、
敬語を使う事も、当たり障り無い表情を装う事も忘れていた。

全部、俺の責任。

協会の幹部である事も、
光の子である事も、
この際、全部関係ない。

全部知った上で、
俺に出来る事を探そう。


「…初代法皇が協会を設立した時は、未だ誰もが信じていた。あの白い星に、神が住んでいるとなぁ…」

俺は彼の言葉を、
懸命に聞いていた。