「…あの洞窟は、初代法皇が自ら入口を隠したと聞く。人々が、見付けてはならなかった物じゃ…」

「……ぇ?」

ドクン、ドクンと…
俺の鼓動が速まっていた。


「…均衡が崩れた。『人柱』を、外部に逃がした…。そうなんじゃろう…?」

「…は……はい…。」


あの氷を割ったのは俺。

残された古代の『蝶の羽根』。
誰もが覚えていないユピテル。

自分の体が、
震えているのが分かった。


「…『人柱』在ってこその、この星だった…。」

「……どういう…事ですか…」


全身の血が引く思いだ。
握り締めた掌は、
自分の汗で湿りきっていた。

――…俺だ、

全てが、俺のせいなのか。


「…運命、なのかのぅ…。人柱を逃がしたのは、光の御子。人々には『蝶の羽根』しか残されなかったが、お前さんは見たはずじゃ…」

「……ユピ…テル…」

「――そう、それは古代の『人柱の名』じゃな…」


頭の中が、
真っ白になった。

取り返しのつかない事をしたのだと、焦りばかりが俺を支配し、上手く呼吸が出来ない。


「…いつか…この日が来ると、予測は出来たよ。街に光の御子が現れたと知った日からなぁ…」