舟師の親父の話には、
今までに無い、
「物的証拠」が含まれていた。
「ほら、ご覧下さいよ…」
毎日舟を着ける、舟着き場。
その岸辺に証拠が在った。
現在の水位より少し上に、
線を引いた様な染みがある。
長年に渡り蓄積された染みは、今までの水位。
「……暑さで、水が蒸発しているという事ですか…?」
「そうでしょうねぇ…」
わずか親指の長さ位だが、
現在の水位とズレが出ていた。
こんな事は今までに無い。
暑さで水が蒸発?
おいおい、
…ちょっと待てよ。
未だ光の季節は始まったばかりで、これから尚この暑さが続くというのに…。
「この調子じゃあ、次の闇の季節が来る前に…カロリスの水位が半分位になっちまったりしてね…。」
舟師は乾いた笑い声を出しながら、再び舟を進めた。
舟は、3番地に在る広場へと向かっていた。
「…これは…」
「本当困りますよ。このままカロリスが干上がってしまったら、商売あがったりだ!水の底に足を着いて歩ける様になっちまいますよ!」
カロリスの底は深い為、舟師の言葉の通りには今年中になりはしないが、長い目で見たら大変な事だ。
水位はずっと均一だった。
何故、急に…?

