院長室でも、
俺は頭を抱えていた。


「…じゃあ、何か…?俺が人柱の氷を割って、出てきたのは古代の『蝶々の羽根』だったと…」


実物の蝶々を見た事が無い法皇を初めとする俺たちは、
前世の世界で「蝶々」を目で見て知っているじぃさんに確認を取る為に、
孤児院にそれを持ち帰った。

そういう話だった。


アイツの話が一切出てこない。

俺がおかしいのか?
いやいや、
気違いにも程がある…。


「…昨日、俺が連れて帰った男…、ユピテルは…?」

もう…じぃさんになら構わない…と、笑われても良い覚悟でそう聞いた。


「……ユピテル?お前さんはジークと2人で帰って来たじゃろ…?…しかし…ユピテル…?」

じぃさんは、
表情を強張らせて固まった。


「……何処かで聞いた名じゃ…」

「だからぁ…」

「…ちょっと待て…。確か…その名は…、わしの前世である闇ばかりの世界で…。わしの友人じゃった青年の名じゃよ?」

……え?

ちょっと待て。
確かに昨日、ユピテルは『久し振りだ』とじぃさんを知っていた様な口振りで…。


「…どんな奴だった?特徴は?」

俺は身を乗り出して、詳しくじぃさんの前世の内容を聞き始めた。