それは、その日の夕暮れ時に訪れた。
食後の運動に実の家の前にある公園に散歩にやって来た二人。
その姿はまるで恋人同士に見えた。
実は全く気にせず、自然の中に溶け込み、
爽やかな涼しい風を感じて楽しんでいた。
詠美の事は余り眼中にないらしい。
「ねえ。実君の好きなタイプはどんなタイプですか? やっぱり紗理奈ちゃんみたいに趣味が合う人ですか?」
と詠美が実に質問した。
「好みのタイプか。とりあえず、自分を好きになってくれた人が好みのタイプかな?」
と普通に返す実。その表情は実に自然だ。
緊張感の欠片もない。
「そうなんですか。じゃあ、今好きな人はいますか?」
「別にいないな……誰が良い人いないかな」
と言う実。そのユニアンスも実に普通。
「実君ならきっと良い人が現れますよ」
と励ます詠美。どうやら彼女は友人の紗理奈の恋を応援しに来たらしい。
彼女に好きな人はいるのかと聞いて来てと言われたに違いない。
紗理奈は、ゲームと漫画、それにアニメや、ファンタジー小説が好きな女の子だ。
確かに趣味なら実と合いそうだ。
そして目的を果たして、
実の家に戻ろうと詠美が言って、
帰りたいんだなと実は思い、
詠美を彼女の通う大学の寮に送った。
「じゃあ、あり得ない小説の続きを楽しみにしてますから!」
実の血筋では、北大医学部は決してあり得ない事ではないのだが。
詠美の言葉に実は少し傷ついたが、
すぐに忘れた。悪気はないよな。
彼女はとても素直で良い女性だから。
実の車はゆっくりと安全運転で帰路についた。
途中で詠美と古本屋に立ち寄り、
題名の無い黒い本を買って……。
詠美はその本とお揃いの白い本を買った。
これが運命の別れ道だとも知らずに……。


