全く表情が伺えない。
制服のブラウスはシワシワだし、すごい猫背ですね……
「彼は穂積郁巳(いくみ)。君と同じクラスだけど名前を覚える必要はないよ。だって君が生涯覚える男の名前は、僕だけだからね」
吉良くんがにこりと笑う。
そうだ、見たことがあると思ったら同じクラスの人だったんだ!
「じゃあ僕は委員会に行ってくるよ。穂積、彼女をちゃんと家まで送るんだよ。
もし彼女になにかあったら……一生明るい世界を見られないと思ったほうがいい」
またね、と私に手を振って教室を出て行く吉良くんにそっと手を振り返す。


