「……はぁ。仕方ないから会計は僕が持つよ」
「あはっ、さすがケイ!男前!」
私の分のお会計も済ませてくれるという吉良くんに申し訳なく思いつつ、沙緒さんと先に店を出た。
「ねぇ、春子ちゃん」
ふと名前を呼ばれ、彼女を見る。
「……!」
思わず、一歩後ずさってしまった。
先ほどまで笑顔を絶やさなかった彼女が、恐ろしく冷えきった目で私を見ていたからだ。
「人のモノを盗ったらドロボーだって、小さい頃に習わなかった?」
私が後ずさった分だけ距離を詰める沙緒さん。
鼻と鼻がぶつかりそうなくらい近づいたあと、彼女は言った。
「ケイは……あたしのモノ、だよ」


