吉良くんはありがとう、と言って笑ったあと舞台袖へと戻っていった。
吉良くんがいなくなったあと、私は穂積くんに向き直る。
「あの、ありがとございました。何かお礼をさせて下さい。一番前の席を取るのなんて、大変でしたよね」
「い、いえ、とんでもない!それに、お礼ならさっき頂きましたんで、はい!」
え……?
私、お礼は今言ったはずなんだけど……
「いえ、もうボクは十分です。先程の春子さんの笑顔が見れただけで萌えが頂点に達したので……!」
「……?」
両手をぎゅっと握りしめながら早口でそう言う穂積くん。
ところどころわからないことがあったけど……
お礼はいらないってことだよね?


