「じゃあ……はい、手。今日は、はぐれないようにじゃなくて、僕が繋ぎたいだけなんだけど」
差し出された右手に、そっと左手をのせる。
恥ずかしいのはこの間と変わらないんだけど……嫌じゃない。
心がぽかぽかと温まるような、むず痒い気持ちに気づかないふりをしてぎゅっと吉良くんの手を握り返した。
タクシーに乗って20分ほど経った頃、とある高層ビルの前に止まった。
吉良くんはお金を払い降りると、反対側に回って私の方のドアを開けてくれる。
「着いたよ。さぁ、どうぞ」
「あ、ありがとう……」
再び重なった手のひらに、どきんと胸が鳴る。
な、なんで……?


