コイツ、俺の嫁候補。

ついこの間まで付き合ってた人って、もしかしてバイト中に見た、あの綺麗なコかな?

そのコだけじゃなく、他にもいるってことはたしかに真実味はありそう、だけど……。



「無自覚って?」

「テニス部のダチが言うには、樋田本人には遊んでるって感覚がないんだってさ。ただ、すぐに飽きるっつーか他のコに目移りするっつーか、根っからの恋愛体質ってやつ?」

「しかもそれを包み隠さず言っちまう、かなりの正直者らしい」



いやいや、それってものすごくタチ悪い……。

思わず頭を抱えてしまった。



「“それでもいい”ってファンをやめない女がまだ大勢いるって言うから呆れるよな」

「そうなんだ……」



あたしなんてすでに幻滅し始めてるんだけど……

100年の恋が冷めた気分ってこんな感じ?

彼女(元カノ?)とのツーショットを目の当たりにした時以上にショックかも。


がっくりとうなだれていると、あたしの顔を覗き込んできた陸が右の口角を上げる。



「牧野もそうなんじゃねーの?」

「へ?」

「こんなに樋田のこと聞きたがるなんて、気があるとしか思えねーじゃん」



し、しまった!