「縁は中学の頃からずっと先輩のこと追っ掛けてたけど、知らないことばっかりじゃない?
でも片霧くんは、まだ知り合って数週間なのに知ってるところいっぱいあるでしょ。それだけ縁にとって近い存在になってるってことじゃないのかな」



いつもふわふわした雰囲気の舞花は、何も考えていなさそうに見えて、時々ものすごく説得力があることを言う。

今だって、揺らがないと思っていたあたしの気持ちを、簡単にぐらつかせてしまうんだから。



「ま、どっちのメンズでもいいんだけどね! あたしは恋に落ちてオトメになってる縁を早く見たいだけだから~」

「……舞花、うちのおばあちゃんと似たようなこと言ってる」

「お、おばあちゃん!?」



七十歳と一緒にされてショックを受けたらしい舞花に笑いながらも、あたしの心は複雑だった。


舞花の言う通り、今一番近い存在だと思うのは那央だけれど、だからって彼に恋愛感情があるわけじゃない。

というか、樋田先輩に対してのこの想いも、本当に恋愛感情なのか疑わしい気がしてきた。


ただの“憧れ”を、“恋心”と勘違いしているだけなのかもしれない……。