県内では可愛い方である制服に着替えると、赤いチェックのスカートの裾をひらりと揺らし、ブレザーと同じ紺色のハイソックスを履いた足で小さな仏壇の前に向かう。

ここでお父さんに挨拶をしてから家を出るのが毎日の日課。

チーンとお鈴を鳴らし、ぱんっと手を合わせる。



「お父さん、縁は今日から高校二年生です。素敵なスクールライフになりますよーに!」



あれ、これじゃお参りか? ……まいっか。

仏壇でにっこりと笑う、眼鏡を掛けたいつまでも若々しいお父さんに、あたしも笑顔を見せる。



「いってきまーす」

「あー縁、自転車気をつけるのよ!」

「大丈夫!」



そうそう、一年の時はバス通学だったけど、今日から自転車で通うことにしたんだよね。

だって運賃値上がりするっていうんだもん。自転車で片道四十分、しかも坂があるから結構ツラいけど、節約のために頑張らねば。

ローファーを履いてアパートの階段を駆け下り、青空の下真新しい自転車に跨がった。

牧野 縁(マキノ ユカリ)、退屈な始業式をこなしてきます!