「よし、こうしよう!」



突然足を止めて、何か思い付いたように声を上げる那央を見やると、口の端を上げて何やら悪戯っぽい笑みを浮かべている。



「え、何?」

「縁の恋は絶対誰にも言わない。その代わり、俺の家で家事手伝って」

「えぇ~~」



交換条件を持ち出してきたか……。

ていうか、家事ってもしや料理以外の仕事も含まれてる?

何気に要求を増やすな!



「そんなに大変なの? いったいどーやって生活してたのよ」

「今までは兄貴が色々やってくれてたんだけどさ、この春から就職して家出ちまったから今大変なわけ。妹ばっかに任せるわけにいかねーしさ」

「でも、だからって何であたしに……」

「縁が気に入ったからだよ」



サラッと。水が流れるかの如く自然に、当然のように言われた。

那央の笑顔は目が離せなくなるほど魅力的でカッコイイ。

けど……絶対またからかわれてるよね?

そう思うと若干イライラしてきて、あたしはツンとした顔でぶっきらぼうに言う。



「悪いけどあたし、大家族とか苦手なの」



ふっと、那央の顔から魅力的な笑みが消えた。