思いっきり不機嫌そうにして振り向くと、那央は顎に手をあて、何か納得したように頷いている。



「ふーん、縁はあの先輩のことが好きなわけね」

「へっ!?」

「あ、その反応は図星だな」



な、何故わかった!?

この想いは舞花以外には絶対知られないようにしてたのに!



「カッコイイもんな、あの人。まさにテニスの王子様って感じで──」

「誰にも言わないで!!」



那央の言葉を遮り、顔の前でぱんっと手を合わせて懇願するあたしに、彼は驚いたように目を丸くする。



「お願い……知られたくないの、誰にも」



きっと今のあたしはりんごみたいに真っ赤になっているに違いない。

俯いていると、那央があたしの顔を覗き込んでぽつりと言う。



「お前、可愛いな」



──ドキン!

また心臓が飛び跳ねてしまい、あたしは思わず顔を上げる。

このあたしが、かつて男子に“可愛い”だなんて言われたことがあっただろうか。いや、ない!



「赤くなっちゃって、オトメだねー」

「ややややめてよ」



面白がってりんごほっぺをツンツンしてくる那央。

からかわれているだけなのに、何でドキドキしちゃうんだろう……あたしのバカ。