コイツ、俺の嫁候補。

なるほど……こうやって藤丸先輩が口止めしているから、カセイクラブについて語る人がいないのか。

謎が多い部だと言われる理由がわかったわ。


タコのような口で「すびばぜん」と謝るネクラと、彼の頬を掴み続けるカレンさんを止めに入る藤丸先輩。

その様子を見てオロオロする奈々ちゃんと、一人納得しているあたしに、那央は平然と言う。



「あいつらはほっといて、縁のお好み焼き食おうぜ」



あぁそういえば。

那央はホットプレートの上で焼かれ続けていたそれを適当に切り、あたしと奈々ちゃんの分を取り分けてくれた。

自分の分にソースを掛けながら、那央は声のボリュームを下げて話し出す。



「カレンさんの料理の下手さはハンパじゃないんだ」

「先週のハンバーグもすごかったですもんね……」

「ただのそぼろになってたもんな」



先週も来ていたらしい奈々ちゃんが、お好み焼きをふーふーしながら苦笑する。

なんだかその時の様子が目に浮かぶわ。



「だから部員が増えないんだよなぁ。今日ヤンキー二人組がいないのも、マズイ料理を食わせられると思ったからだろうし」

「さっき那央が逃げようとしたのも?」