「これまで冗談言ってきたわけじゃねーけど、改めて言うからちゃんと聞いとけ」

「……はい」



那央の瞳がすごく真剣だから、あたしも思わず姿勢を正した。

あたしの左手をとった那央は、シロツメクサの指輪をつけた薬指をそっとなぞる。



「いつか俺に、本物の指輪はめさせてくれよ」



……初めて告白された時みたいに、ドキドキして、幸せで。

ぽたり、あたしの手の甲に一粒の雫が落ちる。


那央は照れ臭そうに少し俯いて、でも優しく微笑みながら言った。



「いつか本物の、俺のお嫁さんになって」



──思いがけないプロポーズ。

それは、まだ見えない、不確かな未来を切り開いていく勇気をくれる、魔法の言葉。



「なお……っ」



白い草花が揺れる中で、あたしは那央の首に腕を回して抱きつく。

彼はそんなあたしを、しっかりと抱き留めてくれた。



那央が“ずっとそばにいる”って言ったのは、

現在(いま)のことだけじゃなくて、これからの長い将来のことを意味していたんだね。


あたし達なら、きっと何があっても大丈夫。

ようやく今、そう信じきることが出来た──。