コイツ、俺の嫁候補。

「おばあちゃん!」



さらに大きな声で呼ぶ。

周りでは、おじさんとお母さんが先生を呼ぼうと動いていたけど、あたしはおばあちゃんから目を逸らせなかった。


ぼんやりと天井を見ていた瞳は、ゆっくりあたしの方に向けられる。

思わず、おばあちゃんのしわしわの手を握った。

すると、あたしに焦点を当てたおばあちゃんの口が、マスクの中で動く。



「……か……」

「うん? 何?」

「……かり……」



──ゆかり……


思いっきり近付けた耳に、たしかにそう聞こえた。

あたしは目を見開いておばあちゃんを見やる。

あたしのこと、わかるの?



「……そう、そうだよ、縁だよ!」



込み上げる涙を堪えて、手を握る力を強めた。

おばあちゃんは目を細めて小さく頷き、ゆっくり言葉をつむぐ。



「あぁ今日は……結婚式だったかね……」



──おばあちゃん……

そばにいる那央を見上げて、お互い目を見合わせる。

おばあちゃんは、呼吸しづらそうにしながらも、優しく微笑んだ。



「きれいだよ、縁……」