無言でテーブルを拭くあたしに、舞花は目を丸くして言う。



「うそ、本当にまだなんだ。付き合ってもう一年でしょ? そういう雰囲気にならないの?」

「雰囲気にはなるけど……」



夏休み中の数少ないデートのうち一日は、あたしのアパートに初めて那央を上げた。

その時も濃厚なキスをされて押し倒され、あたしは一応バージンを捨てる覚悟をしたわけだ。

ところが、なんとそこでお母さんが帰宅。

早番だったことをつい忘れてしまっていたのだった。


赤面しつつそのことを話すと、舞花は哀れみの表情でアイスをすくう。



「かわいそー片霧くん……」

「あたしも悪かったと思ってる……。まぁ、だからお互いその気があっても場所がないってことよ」



那央の部屋だって、いつ誰が入ってくるかわからないし。

付き合って一年もキス止まりなんて、たしかにピュアだよねぇ……。



「でも、二人とも合格したら離れ離れになっちゃうんでしょ? 今のうちにたくさん触れ合っておきたいとか思わない?」



何気なく言われた言葉に、あたしの胸がちくちくと痛みだす。