そこで考えたのが学生寮に入る方法だった。

お母さんもおじさんも、お金のことは気にするなと再三言っていたけど、やっぱり少しでも無理がないようにしたい。ただ……



「もし入れたら、那央とは4年間離れることになっちゃうけど……」



県外の、しかも寮生活となれば、地元に残る那央とは会える時間はかなり限られるだろう。

でも、あたし達ならきっと大丈夫だって、自分に言い聞かせて決めたの。

きっと、遠恋になったって平気だよね……?


そんな想いも込めて那央を見上げると、思いのほか彼の笑みは覇気がなかった。

目を伏せて「そうか」と頷く那央は、ぽつりと呟く。



「寂しくなるな」



……もう、何で言っちゃうかな。

口にすると余計寂しくなるから言わないようにしてたのに。



「そうだね……」



あたしはやっぱりワガママで。

那央ならもっと違う言葉を言ってくれるんじゃないかって、勝手に期待していた。

“離れても大丈夫だ”って自信を持たせてくれる、魔法みたいな言葉を掛けてほしかったな──。



しんみりとした空気に包まれるあたし達は、胸の不安を掻き消すように強く手を繋いで、沈みゆく夕陽を目に映していた。