2月14日。

彼氏が出来て、初めてのバレンタイン。

男子にチョコをあげるなんて初めてだし、本当ならもっとワクワクドキドキするはず。

なのにあたしは、いまいち浮上しない気分のまま手作りチョコをバッグにしまっていた。


毎年トリュフを作るのが恒例で、お父さんの仏壇に供えて、お母さんと食べるのがお決まり。

でも今年は那央と、健司おじさんにもあげるつもり。

赤いチェック柄の箱は那央用、青はおじさん用。放課後にでも渡そう。



今日はラッキーなことに5時間授業の日。

舞花も相変わらずピンク色の空気を振りまきながら、彼氏と帰っていった。

そしてあたしは。



「那央……これ、まさか全部チョコ?」

「まーね」



今日はちゃんと帰る約束をしていたから、会えるのを楽しみにしていたものの。

那央の手に持たれた、ギフト用の紙袋いっぱいに詰められたチョコ達を見て、あたしは口元を引きつらせていた。