「あぃうんおぉ~!?」

「はは、何言ってるか全然わかんねー」



そりゃそーでしょーよ、口塞がれてんだから!

キッと睨むと、那央は「静かにしろよ?」と念を押して手を離してくれた。

ぷは、と息を吐いたあたしは、さっきと同じ言葉を音量控えめで口にする。



「何すんのよ!」

「実は今、中で新入部員を迎えるために準備してんだけど……まーワケあって俺はずらかろうと。部員なんだ俺、ここの」

「えぇ、部員!?」



また思わず叫んでしまいそうになり、あたしは自分で口に手をあてる。

那央は調理室の方を振り返り、誰も出てこないことを確認してあたしに向き直った。



「縁も、まさかここに入ろうとしてる?」

「そのつもりだけど……」

「家事得意なわけ?」

「まぁ、人並みには」

「マジか、期待してるわ! とりあえず俺は今日は帰る」

「はー?」



まったく状況が飲み込めないあたしの両肩にぽんっと手を置くと、那央は急いでその場を後にしようとした……のだけど。



「か~た~ぎ~り~~」



地鳴りのような声が、ガラリと開いたドアの向こうからこだました。