カセイクラブの活動日は毎週水曜日らしい。

17時からバイトが入っていたけれどシフトを代わってもらい、あたしは一人調理室に向かっていた。

募集の紙に“だいたい調理室にいます”と書いてあったから(アバウト過ぎて漠然とした不安を感じるけど……)。


教室がある棟から離れたこちらの方にはあまり人がいないけれど、調理室の方からは話し声やカチャカチャと器具か何かを弄る音がする。

そこへ向かって足を進めていた時、調理室の手前にある準備室のドアが静かに開いて、誰かがそーっと出てきた。

泥棒みたいな動きをするその人物と顔を見合わせた瞬間、お互いに「あ!」と声をあげた。



「那央っ!? こんなとこで何して──」

「バカ、声がでかい!」

「んぐ!?」



突然あたしの腕を掴んだと思うと、もう片方の手でヤツに口を塞がれた。

なになになにすんのーっ!?



「ん~~~!!」

「ちょっと黙っててくれ、今せっかくうまいこと抜け出したんだから」



ジタバタともがくあたしにキレイな顔をずいっと近付け、片霧那央はなぜか必死な様子でそう囁いた。