コイツ、俺の嫁候補。

おじさんはどこか遠くを懐かしそうに眺めながら言う。



「さっちゃん達が結婚した時も素直に嬉しかったよ。君のお父さんのことも親友として大好きだったし。
それに、その頃僕にも結婚を考えてた相手がいたからね」

「あ、そうなんだ……」

「うん。──もう、会えないけど」



一瞬、表情に影を落としたおじさんは、あたしを見つめて力無く微笑む。



「彼女も事故で亡くなったんだ。入籍する一週間前に」



──ドクン、と心臓が重い音を立てた。



「もう悲しいなんてものじゃなくてね。世界が終わりを迎えたような、目の前の全部が灰になったような感じで……。彼女がいないんじゃ、僕の生きる意味なんてないって思った」



伏し目がちに話すおじさんからは、その時の悲壮感がひしひしと伝わってきて、胸が痛い。

まさか、彼にもそんな出来事があったなんて。



「だから、愛する人を亡くしたさっちゃんの気持ちは、十分過ぎるほどわかるんだ」



そっか……だからお母さん達は自然とお互いを必要としていたんだね。

そう考えると、二人が惹かれ合ったのは必然なのかもしれない。