コイツ、俺の嫁候補。

「縁ちゃん、遠慮しなくていいんだからな?」

「うん、ありがとう」



健司おじさんは本当にいい人で、ちょっぴりお茶目な所があったりもする。

話すうちにその人柄も改めてわかったし、あたしもおじさんの性格は好きだ。



「そーよ。たまの贅沢なんだからどんどん食べなさい」

「さっちゃんはもうちょっと遠慮しようかー。すでに生ビール3杯目だよ」

「私がビール好きなの知ってるでしょ? 諦めて」

「えぇー」



二人のやり取りに自然と笑いがこぼれる。

昔から友達だったせいもあるだろうけど、本当の夫婦みたいに馴染んでいて違和感がない。


だからこそ、怖くなる。

あたしだけが取り残されているようで、

自分の居場所がなくなりそうで──。



「ちょっとお手洗いに行ってくるわね」



途中でお母さんが席を立ち、おじさんと二人になると気まずさが襲う。

さっきまで進まなかった箸を、今度は黙々と動かしていると。



「ごめんな、縁ちゃん」



健司おじさんが突然謝るから、あたしはぴたりと動きを止めた。