コイツ、俺の嫁候補。


戸惑ったままのあたしに、その日は突然訪れた。

おばあちゃんが新しい施設に移り、荷物を運んだりする手伝いをしに来ていた時。



「あっ縁、あそこにいるわ」

「え──」



お母さんが、施設の入口の前で話す数人の職員のうち、一人の男の人を指差した。

清潔感のある短めの黒髪、愛嬌があって優しげなたれ目……あぁ、見覚えがある。

彼を見ていると、その人もあたし達に気付き、ぱあっと顔を輝かせた。そして。



「ゆ、ゆ、ゆ……縁ちゃーん!!」

「ぅぎゃっ!?」



名前を叫びながら突進してきて、あたしをぎゅうぅと力一杯抱きしめた。



「元気だったかい!? おじさん会いたかったよ~!」

「ちょっと健司くん! 縁が魂抜けてるわよ」

「はっ」



お母さんに引きはがされた健司おじさんは、放心状態のあたしに気付いて目を丸くする。



「あぁぁごごごめんな! 嬉しかったもんだからつい……!」

「い、いえ……お久しぶりで……」



思い出した……健司おじさんってテンション上がるとこんな感じになるんだった。