コイツ、俺の嫁候補。

「え……えぇっ!? いつの間にそんな関係になってたの!?」

「ちゃんと付き合い始めたのは今年に入ってからよ。それまでに色んな葛藤があってね。お母さんも散々悩んだの」



苦笑するお母さん。

そりゃそうだよね、悩まないはずがない。

しかも相手はお父さんの友達なんだし。……なんか余計複雑だ。


でも健司おじさん、懐かしいなぁ。

よくあたしと遊んでくれて、お父さんが亡くなった後もあたし達のことを気遣ってくれてたっけ。

ものすごく優しくて世話好きで、とってもいい人だって印象が強い。



「おじさんに最後に会ったのいつだったかな……」

「まだ小学生の頃じゃないかしら。彼、転勤でここを離れてたから」



そうだったのか……。

でもこれで、お母さんのことをずっと支えてくれていたってことも納得。

あたし達を大切にしてくれるんだろうってことも。

──だけど。



「縁も、今度健司くんと会ってみてほしい」



いくら面識があっても、他人は他人。

あたしは、おじさんのことをお父さんって思える?

本当の親子になれるの──?


顔を隠そうとする太陽を眺めたまま、あたしは曖昧な返事しか出来ずにいた。