コイツ、俺の嫁候補。

だから、その人には感謝しなければいけないんだろうけど。



「そんなに、好きなの? その人のこと……」

「好きよ、もちろん」

「……お父さんよりも?」



赤信号で停まり、お母さんがあたしの方を振り向く。


まだまだ長い人生を、ずっとお母さん一人で生きていってほしいわけじゃない。

でも、お父さんとの愛情とか、絆みたいなものが薄れてしまうような気がして、少し寂しかったりもする。


複雑な心境のあたしに、お母さんはゆっくり言葉を選ぶように話す。



「お父さんとは比較出来ないわ。二人への気持ちはまた別物だから。でも、どちらの人もちゃんと好きなのはたしかよ」



まだ浮かない顔をするあたしを安心させるように、お母さんは微笑む。



「もちろん縁のことも考えてる。彼なら絶対、私達を愛してくれるって信じられる人なの。なんせ縁も知ってる人だから」

「えっ?」

「お父さんと私の友達の健司くん。覚えてる?」



ケンジくん……

って、もしかして!?

お父さんがまだ生きてた頃、よく遊びに来てくれてた健司おじさん!?