コイツ、俺の嫁候補。

「うっそぉ……」

「この間、縁に彼氏が出来たって話をした時に、私も言おうか迷ったんだけどね」



唖然とするあたしに、ゴメンともう一度謝るお母さん。



「その人、認知症の人も受け入れてくれる特別養護老人ホームっていう施設で働いてるの。だから彼も協力してくれるって言ってるし、安心して任せられるじゃない?」

「そうかもしれないけど……でも再婚までする必要ある?」



再婚するってことは、あたしに新しいお父さんが出来るってことで。

あたしもきっと名字が変わったりするわけで……

そんな重大な覚悟、簡単には出来ない。



「……私はね、おばあちゃんのことがなくても再婚したいと思ってたの」



まっすぐ前を見据えながら、真剣な表情でお母さんは言う。



「お父さんが亡くなって一人で縁を育ててきたけど、昔から知り合いだった彼は、ずっと陰で私の支えになってくれてた。そんな彼と一緒に生きていきたいって、いつの間にか思うようになってたわ」



お母さんの苦労はあたしが一番よくわかってるつもり。

支えがなければ、ここまで二人でやってこれなかったかもしれない。