それから、あたし達のことはしばらく話題になっていたみたいだけれど、11月にもなるともう皆の興味は逸れていったようだった。
ようやく周りが静かになって、平穏な日々が戻ってきた頃。
あたしは新たな問題に直面することになる。
「ご飯の時間は何時だったかねぇ?」
「12時よ。さっき食べたでしょう」
「嘘言わないどくれ。私はもうお腹が減って死にそうなんだから! 縁からも年寄りをイジメるなって言ってやっとくれよ」
「おばあちゃん……」
老人ホームへやってきたあたし達は、おばあちゃんの異変に戸惑っていた。
少し前から物忘れが多くなったと思っていたけど、それに加えて最近は怒りっぽくなっている。
「やっぱり認知症らしいわ……」
帰りの車の中で、ハンドルを握りながらお母さんが深く息を吐き出した。
「食事の内容を覚えてないのはただの物忘れだけど、食事したこと自体忘れてるのは、認知症の典型的な初期症状なんだって。怒りっぽくなったのもね」
「そうなんだ……」



