放っておけばすぐに治まるかと思っていた女子達の敵意は、10月に入ってもその気配がない。

日直の仕事を終えた今も、あたしは那央のクラスの前で固まっていた。



「牧野さん、中学の頃はヤンキーだったって噂だよ?」

「うっそー! 片霧くんはあの子のどこが良くて付き合ってるんだろうねぇ」

「どーせ男の前じゃ猫被ってるんじゃないの?」



あたしはヤンキーじゃないし、猫被ってもない!!

どうしてそんな噂になってんのよ!?


教室の中で話すギャル数人の声が丸聞こえで、あたしは頭を抱える。


今日は那央が、「日直が終わるまで待ってるから一緒に帰ろう」と言ってくれていた。

あまり人が残っていないこの時間なら、那央のクラスまで行ってもいいかと思ったんだけど……やっぱりやめとけばよかった。


こんな話をしてるくらいだから、那央は今教室にいないんだろう。

もう一度自分のとこに戻って、那央にメールするか……。

そう思い、踵を返そうとすると。



「でも、きっとそんな長続きしないよ。卒業したら離れるんだしさ」