反射的につむった瞳を開けると、わずか数センチの距離にあるのは、悪戯っぽく笑う那央のキレイな顔。



「翔達に見せるわけにいかないからな」



しーっと人差し指を立てる那央に、あたしは火照る顔で笑う。

まだ虹に釘付けになっている二人を確認すると、傘に隠れてもう一度短いキスを交わした。



この幸せがずっと続いてほしい。

片時も離れないで、ずっと二人で寄り添い合っていたい。


でも、那央は同じ気持ちかな?

この形が壊れることなんてないよね?……と、訳もなく不安になるのはどうしてだろう。


あの虹だって、時間が経てば消えてしまう。

幸せも同じく儚いものだから、いつかは消えてしまうんじゃないかな──。


“幸せ過ぎて怖い”って、きっとこういうことなんだ。

こんな贅沢な不安、なくなってしまえばいいのに。


再び那央としっかり手を繋ぎながら、あたしはまだ空に掛かっている虹をしばらく眺めていた。