コイツ、俺の嫁候補。

一つの傘に二人で身を寄せ合い、ぱしゃぱしゃと雨水を跳ねさせながら歩く。

外へ出掛けてる時の雨は好きじゃないけど、那央とこんなふうに歩けるなら雨もいいかも。

……なんて思うあたしは、相当乙女になっているらしい。


駅から少し離れた辺りで、ふいに那央が言う。



「川沿いの道通って帰るか」

「うん、いいよ。あたしあの道好き」

「俺も」



こんな小さな共通点が見付かっただけで、胸が温かくなるから不思議。


春はたんぽぽ、秋はコスモスが咲き乱れる緩やかな草原の坂の下に、小さな川が流れている。

この川沿いの道を、弱くなった雨の中、二人で話ながらゆっくり歩く。



「ここ、昔から片霧家の遊び場なんだ」

「そうなの? あたしも昔からよくここ通ってるよ」

「じゃーお互い知らなかっただけで、実は前から会ってたのかもな」



もし本当にそうだったとしたら、なんだかちょっと運命的。



「遊ぶだけじゃなくて、悩んだ時とか一人になりたい時とか、結構ここに来てた」



那央の言葉に、あたしは頷く。