コイツ、俺の嫁候補。

「家からもそんなに離れてないくせに、『通うのが面倒』とか言って出て行っちまうんだもんなー。薄情なヤツだ」



そう言いながらも、二人のやり取りを見ているとやっぱり仲は良さそうで。

料理を運んできてくれた凪さんと言い合う様子が微笑ましくて、自然と笑みがこぼれた。


料理の味もまた格別。

片霧家母の味だと言うコロッケも、評判の通りとっても美味しかった。



「本当に美味しい! 幸せ!」

「俺は縁に毎日飯作ってもらえたら幸せだけどな」



ほっくほくのコロッケを頬張って感動するあたしに、那央はスープを飲みながらそんなことを言う。

なんかプロポーズみたいだよ、それ。

と心の中でつっこむけれど、やっぱり嬉しい。



「……修業します」

「え?」

「このくらい美味しい料理を作れるように、修業する」



那央はきっとこの味に慣れてるはずだもん、あたしも頑張って近付きたい。


一瞬キョトンとした那央は、あたしを愛おしそうに見つめると、

「やっぱり後で抱きしめさせて」

なんて言って、無邪気に笑うのだった。