コイツ、俺の嫁候補。

「心配しなくて大丈夫だよ。縁ちゃん可愛いからすぐ食べちゃいたいとこけど、弟の彼女に迫るなんてフトドキなことしないから」

「手! 手!!」



あたしの肩に乗せた手を、しっしっ!と払う仕草をする那央。

なんだかあたしを独占してくれてるみたいで、ちょっと嬉しくなる。

凪さんは本当に軽そうだけどね……。


そんなやり取りをしている間にもどんどんお客さんがやってきて、凪さんはキッチンへと戻っていった。

結局あたしは明太子クリームの生パスタを、那央は日替わりランチを頼み、コロッケはサービスしてもらうことに。



「兄貴はここのキッチンで調理師やってんの。名物のコロッケを作り出したのもあいつ」

「そうなの!? でも今年就職したって言ってなかった?」

「就職したのは今年の春だけど、その前からここでバイトしてたんだ。兄貴の料理の腕はたしかにすごいんだよな」



那央の話によると、凪さんは現在二十歳で、このレストランの二階にある居住スペースで暮らしているらしい。

離れには店長さんとその家族が暮らしているようで、凪さんの腕とやる気を見込んで部屋を貸してくれたのだとか。