コイツ、俺の嫁候補。

そんなイケメン店員さんに、何故か那央は眉をひそめる。



「サービスって、そんな権限が兄貴にあるのかよ」

「おい、誰がこのコロッケ作ってると思ってんだ。それに弟が彼女と来てくれたって言えば、店長は絶対許してくれるさ」



兄貴……弟……? って!



「え!? 那央のお兄さん!?」

「正解~! はじめまして、縁ちゃん。兄の凪(ナギ)です。那央がお世話になってます」

「こういう時だけ妙な兄貴ヅラするのやめろ」



礼儀正しく頭を下げる凪さんに、那央は口の端をヒクつかせている。

この人が長男なんだ……誰かに似てると思ったら那央じゃん!

しかも、彼はあたしのことを知っているみたい。



「もしかして、今日の目的は凪さんにあたしを会わせることだったの?」

「そう。この男、今はこんなふうに爽やかぶってるけど、とんでもない女好きだから。今日は縁に手出すなって忠告しておこうと思って」

「兄ちゃんに向かって何てこと言うんだお前は」



顔をしかめる凪さんは、突然あたしの肩を抱くように手を置いた。

ギョッとするあたしに、彼はにこりと爽やかスマイルを浮かべる。