コイツ、俺の嫁候補。

──じわりと瞳に込み上げる熱いモノで、那央の愛おしい顔が霞んでいく。


あたし、そんなにいい女じゃないよ。

だけど、あたしを女扱いしてくれるだけじゃなく、特別扱いしてくれてるような気がして

すごく、すごく嬉しかった。



「……そう。じゃあ、君が牧野さんを守ってあげたらいい。僕が欲しいのは奈々ちゃんだから、君には関係ないよね?」



穏やかな口調で言う先輩だけど、言葉にはどこかトゲを感じた。

素敵だと思っていた笑顔も、今ではうさん臭く見えてくる。

あたしはもうこの人にどう思われようと構わない。だけど。



「……先輩、本当に奈々ちゃんのこと好きなんですよね?」



ちゃんと奈々ちゃんを大事にしてくれるよね?

それを確かめたくて、なんとか涙を堪え、那央の後ろから静かに問い掛けた。


すると先輩は、あたしに目を向けると、

「僕はそれほどじゃないよ。彼女は僕のことを好きみたいだけど」

と、あっさり言い切った。