コイツ、俺の嫁候補。

「それより牧野がいいんじゃないっすか? 暴力的でガサツで、女っ気がない牧野縁」



突然あたしの名前が出てきたため、再び意識はそちらへ向く。

陸め……何余計なこと言ってんのよ!

恨めしい気持ちで睨んでいると、樋田先輩は少し眉を下げて笑った。



「悪いけど、僕は女の子らしい子が好みなんだ。守ってあげたくなるような子が」

「じゃーあいつは正反対か!」



……先輩が、陸達と一緒に笑っている。おかしそうに。

ちくりと胸が痛む。



「昔、牧野さんがケンカしてた時に助けたことがあったけど、あの子なら自分で自分の身も守れそうだよね。後から思って、ちょっと後悔したよ」



──その瞬間、あたしの中で何かがプツンと切れた気がした。


あたしが女の子らしくないのは自分が一番よくわかってる。

でも、先輩がそんなふうに思っていたなんて……

あの時の綺麗な思い出に、一瞬で泥水をかけられたように思えた。


わなわなと震える手を強く握り、煮え返る感情を必死で抑えようとしていると。

隣にいた那央が、突然彼らの方に向かって歩き出した。