コイツ、俺の嫁候補。

苦笑しながら「そうだな」と答える先輩に、海が馴れ馴れしく問い掛ける。



「樋田サン、今度はあのコ狙ってんすか?」

「狙ってるっていうか、ただ一緒に帰りたいなって思っただけだけど」



いつもの王子様スマイルを浮かべて言う先輩。

そうなんだ……先輩も奈々ちゃんのこと気になってるんだ!?


きゃー!と一人ドキドキしていると、隣で一緒に聞いていた那央が、何故か怒ったように顔を歪める。



「……先輩、彼女いるんじゃなかったのか?」

「あぁ、なんか別れたとかいう噂だよ」

「え? それでもう奈々ちゃんに手出そうとしてんの? テレビのリモコンぐらい切り替え早いな」



なんだその例えは。

まぁでもホント切り替えは早いよね……。



「つか、縁はそれでいいのかよ」



困惑した表情で言われて、あたしは那央がまだ誤解したままだったことを思い出す。



「あー、そのことなんだけど……」と、とりあえず先輩のことは好きじゃないんだと伝えようとした、その時。