コイツ、俺の嫁候補。

不服そうに頬を膨らませながら、再び来た道を戻る那央だけど、あたしは正直かなりホッとしていた。

ひとまず中断出来てよかった……。

でも、この後また蒸し返されたらどうしよう。


悶々と考えながら再び中庭までやってくると、まだテントの辺りに人がいるのが見えた。



「あれ、陸と海? まだいたのかよ」

「だねぇ……」



折りたたみの椅子に座って、隣のテニス部の誰かと話しているようだ。

そういえば、テニス部に友達がいるとか言ってたっけ。

特に気にせず近付いてみるけれど、陸達の友達以外の部員に気付いて、あたしは足を止めた。

あれは樋田先輩……!



「縁? ……何してんの」



渡り廊下の壁に隠れるあたしを怪訝そうに見る那央。



「や、先輩がいるから、なんか意味もなく気まずくて……」

「なんだそりゃ」



その時、陸達の友達がこんなことを言うのが聞こえてきた。



「先輩、今日はもう吉澤さんいなくて残念でしたねー」



吉澤さん?って、えーと……

もしかして、奈々ちゃん!?