「違うなら、何で?」



ようやく足を止めて振り返った那央が、あたしをまっすぐ見据える。

無造作に流された前髪から覗く綺麗な瞳に捉えられると、もう目を逸らせない。



「そ、それは……」



あぁぁどうしよう……!

まさか、今が告白するタイミングなの!?

むりムリ無理!! 心臓が口から出そう!


またもや逃げ出したくなる臆病者のあたしは、この危機を打開すべく様々な言い訳をハイスピードで検索する。

すると、あたし達の横を通り過ぎていった女子の、派手なビニールのバッグが目に入った。

その瞬間、あたしはあることを思い出す。



「忘れた!」

「……お前さ、はぐらかすにしてももう少し上手い言い方が」

「そうじゃなくて、本当に忘れたの、水着!」



カセイクラブの模擬店のテントの下に置いたまま忘れてきてしまった!

がっくりとうなだれ、脱力する那央。



「……ったく、しっかりしてくれよ縁サン!」

「すいません」